2022-05-10

産業保健のはなし

Meditの活動の一つに、「産業医」の活動があります。
産業医は昔からある仕事の分野なのですが、普段あまり接点がなく、イメージがわかない方も少なくはないと思います。実は産業医の役割は最近とても注目を集めていて、導入される企業様が増えてきています。

この記事では、「産業医とは?」というイントロダクションと、私が臨床医(診察室の医師)から産業医の仕事を始めたきっかけについて、お話させて頂きたいと思います。

産業医って何をする人?

「産業医」「産業保健」の分野は、元々は高度成長期を支えた第二次産業を中心に、従業員を労働災害から守るという役割がありました。過労死が社会問題になってきた1980年代になると、福利厚生の一環として、健康診断を元に身体的な管理をする役割の需要が生まれました。そして時代は現代に近づき、産業構造がサービス産業メインになり、過重労働やメンタル問題などが注目されるようになってくるにつれ、産業保健の役割は「事例ごとの調整・支援」「事例の予防」へと変化してきました。

“新しい産業医”とは?

最近ではさらに一歩進んで、「健康経営」というキーワードが注目されるようになりました。経済産業省が認定する「健康経営銘柄」「健康経営優良法人(ホワイト500)」が象徴するように、企業が「従業員の健康に配慮している」ことが一種のステータスとして評価されるようになり、健康への取組みの入り口として産業医を導入される企業様が増えてきました。これはどういうことかというと、スタッフの健康への配慮が、従来の労災対策や福利厚生的な枠組みを超えて、「経営上の課題」と認識されるようになったからです。

具体的には、「従業員の健康問題は、経済的な損失につながり得るのでリスクマネジメントが必要である」(マイナスを減らすアプローチ)、「従業員の健康を高める取り組みが、生産性の向上や職場の活気にもつながる」(プラスを増やすアプローチ)の両面から、経営上の重要タスクと考えられています。SDGsの考え方や、今時のライフスタイルとも合致するため、「企業イメージのup」にも直結しますね。

ということで、時代が求める”新しい産業医”の仕事は、従来の労災対策や事例ごとの対応をしながら、より細やかな「予防」のための配慮をし、職場の健康と安全を高める取り組みについて、事業所様ごとに最適なスタイルを一緒に作っていくこと、と言えるかと思います。

産業医としての思い

医師として、私は自分の仕事を、「医療(予防・治療・支援)を提供すること/医療の知識に基づいて人と社会の健康を高める活動をすること」だ考えています。「『産業』医」の仕事というのは、社会を構成する単位の中で、特に職場環境で医療の提供(予防・支援)と健康を高める活動をすることだと考え、日々取り組んでいます。

元々私は、「健康」とは、診察室の中で解決できる部分はごく一部で、本来は人それぞれの生活の場――職場や、家庭や、学校や、地域で――育てていくものであり、支援していくものだという思いをもっていました。診察室での仕事もとても大切にしていますが、病院の外でも、一緒に健康を育てる活動がしたくて、産業医の仕事を始めました。

「健康」も「快適」も人により、場所により、カタチは様々です!
スタッフの健康と安全を守り、経営上のリスクを予防し、スタッフが生き生きと働ける環境づくりをするために、何が必要か、何ができるかを、スタッフの方々と一緒に、一つずつ考えるお手伝いができたらと思っています。法律に定められた産業医の仕事の枠組みもありあますが、健康と安全にかかわる取組みには形がない物も多いはずなので、その時々に合わせて、それぞれの事業所様ならではのプランを一緒に作っていけたらと思っています。ユニークで楽しい取組みが生まれたら嬉しいですね!

原田 麻純(はらだ ますみ)/産業医・ヘルスプロモーター

元文系・元会社員の医師.東京大学文学部卒業、広告制作会社勤務.鹿児島大学医学部卒業後、総合内科に勤務.鹿児島県内の病院で健診・産業医の職務に就きながら、個人で産業保健・学校保健をメインにへルスプロモーション活動を仕掛けている.目の前にいる相手にフィットする分かりやすい言葉と表現で情報を伝えることに情熱を注いでいる.趣味はカメラと楽器.動物が大好き.

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